SakeWiz
とは
『SakeWiz』が世界を繋ぎ、業界を盛り上げる!
世界一信頼できる日本酒情報を提供するサービスへ
「日本酒で世界を繋ぐ」をコンセプトに掲げ、和酒バル『Firenze Sake Tokyo』の運営と
アプリ『SakeWiz』の開発・運営を行っているSakeWiz株式会社。今回は、その事業を率いる3人にお話を伺う機会をいただきました。
日本酒の本来の魅力について語る熱い言葉、そして「日本酒×イタリアン」「日本酒アプリ」が見せる日本酒の新しい可能性に注目です。
プロフィール
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- 代表取締役社長 森 学(写真 中央)
- 楽天株式会社の役員、楽天リサーチ株式会社の社長を務めた後、日本酒と世界を繋げる事業がしたいと考え、SakeWiz株式会社を起業。
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- 代表取締役副社長 熊谷 貢(写真 左)
- 日本酒とイタリアンが楽しめるお店『Firenze Sake Tokyo』のコンセプトや運営プロデュース全般を手がけている。
森氏と熊谷氏の出会いは、熊谷氏が経営するワインバー。
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- Director ジェイソン・エバンス(写真 右)
- アプリ『SakeWiz』の開発全般を担当している。森氏とエバンス氏との出会いは、唎酒師の資格の勉強会。日本人よりも日本酒に詳しい。
日本酒造りが進化する一方で、
落ち込む消費量
―本日は、日本酒で世界を繋げるためにアプリの開発と飲食店の運営を行っているSakeWiz株式会社のお三方にお時間をいただきました。ありがとうございます。
まずは、皆様が事業をおこすほど心動かされた日本酒の魅力とはどのようなところにあるのでしょうか。
森:シンプルに言うと、日本酒の魅力は純日本製であること、そして雑味がなく繊細な味わいがあることだと思います。ピュアで、日本人の繊細さを反映したお酒とも言えるでしょう
ジェイソン:私は日本に来てから日本酒を知ったのですが、日本酒は様々な造り方があり、飲み方のバリエーションも豊富。色々な楽しみ方ができる点にとても魅力を感じましたね。
森:今、この日本酒の品質は非常に上がってきていると伺っています。
熊谷:そうですね。特に、ここ10年くらいは日本酒業界に改革が起こっているような印象です。
その背景としては、多くの酒蔵が世代交代を迎えていることがあげられるでしょう。70代の先代から大体30代半ば~40代くらいの社長様に代が引き継がれた後、新しい日本酒づくりを始めるところが増えているのです。また、最近は「純米酒」が消費者に認められ始めていて、醸造アルコールを入れずに作るのが主流になってきました。醸造アルコールを入れずに純度の高い日本酒ができることも日本酒の品質上がっている要因の1つです。
―代が変わる中で、日本酒とその造り方は進化しているんですね。
熊谷:その一方で、蔵元さんが原点に立ち返るような動きもあります。
例えば、多くの蔵元さんは原料となる「米」に対してこだわりを持っていて、自分達の県、地域で作られるお米を使った日本酒造りを行っているのをご存知ですか?地元の人の手でお米を作り、そのお米で日本酒を造ろうという動きもあるんですよ。これは、まるでワインでいうところの“ブルゴーニュ”の発想に近いですね。
―私たちが普段飲んでいた日本酒は、そうした蔵元さんたちの取り組みの元で造られていたんですね。
こだわりの日本酒造りが進む中、日本酒の消費量はどう変化していますか?
熊谷:残念ながら、日本酒の消費量は落ちています。
酒蔵によっては売上が伸びている場合もありますが、大手飲料メーカーの日本酒が軒並み販売量を落としていて、全体的に見るとやはり落ち込んでいますね。
―日本食が注目される中で、日本酒もまたその注目を受けているのかと思っていました。
熊谷:日本酒は、ワインなんかと比べるとネットで得られる情報も非常に少ないですよね
実際には、大手以外は家族で経営されていることが多い蔵元さん。なかなか営業に行く時間や情報を発信する時間を作れないということがあると思います。
森:そうですね。日本酒は世界に誇れるプロダクトであり、世界文化となった「日本食」をより引き立てることができる存在でもあります。しかし、その魅力や歴史がまず日本人に理解されていないというのが現実です。
僕はこうしたところに問題意識を抱き、日本酒の素晴らしさを伝えるために何かできることはないかと考えるようになりました。
互いに求めていたパートナーに出会い、
SakeWizを起業
森:僕は楽天で働いていたのですが、2016年3月末に、楽天本体の役員や子会社の社長を退任しました。その後1年くらいは顧問として残っていたのですが、フルタイム勤務ではなく、時間の余裕ができました。そのときに、今後のビジネスを考えはじめ、以前から好きだった日本酒に関する事業をやりたいと思ったのです。
その後構想を練り、日本酒の魅力を伝える店舗と日本酒好きのユーザーが使うアプリを開発しようと考えました。
―ビジネスパートナーである熊谷さん、ジェイソンさんとは、どのように出会われたのでしょうか?
森:熊谷とは、僕が彼のワインバーに通っていて、7年くらいの付き合いでした。毎週のようにお店に通って話していくうちに、僕が彼のファンになってしまって。
ビジネスセンスがあるし、トークも上手い。この人と組んだら、ビジネスがうまくいきそうだというイメージを持っていました。そこで、「日本酒に関するお店をやりたい」という話を熊谷に打ち明けたんです。
―熊谷さんは、森さんからの話を聞いてどう思われましたか?
熊谷:これはチャンスだなと思いました。
私も元々日本酒が大好きで、今までイタリアンのお店をやっていたこともあり、日本酒とイタリアンを組み合わせて提供するお店を開きたい、と考えていたんです。
そんなときに、お店の常連さんでありIT業界で著名な森から「日本酒を世界に繋げるビジネスを始めたくて、その発信ができるお店を開きたい」という話を聞いた。すごくスケールの大きい話ですし、すぐにチャレンジしてみたいと思いました。
―まさにベストなタイミングだったんですね。
アプリの開発をしているジェイソンさんとは、どのように出会われたのですか?
森:僕は日本酒好きが高じて「唎酒師」という資格をとったのですが、その勉強会で隣の席に座っていたのがジェイソンです。
ここでもまた面白い偶然がありまして。自己紹介をしてみると、ジェイソンは楽天の社員だったのです。当時僕も楽天に籍をおいていましたから、驚きました。仕事上での付き合いはなく、これが初対面でした。
さらに話をしてみると、彼は日本酒のアプリを作りたいと考えていて、日本人のビジネスパートナーを探していたんです。僕も同じように日本酒のアプリを作りたくて、エンジニアを探していた。しかも、アプリの海外展開も考えていたので、外国人のエンジニアがいいなと思っていた矢先の出会いでした。
―こちらも、運命というか強い縁を感じる出会いですね。
ジェイソンさんは、森さんのお話を聞かれてどうでしたか?
ジェイソン:森の言う通り、ほぼ完璧なシチュエーションで出会ったのですぐに一緒に動くことを決めましたね。
森:2人との出会いがなければ、和酒バル『Firenze Sake Tokyo』アプリ『SakeWiz』はなかったかもしれませんね。
斬新な組み合わせで話題の和酒バル
『Firenze SAKE』
―ここからは、SakeWiz株式会社が行っている事業について伺ってまいります。
まずは、和酒バル『Firenze Sake Tokyo』はいつ頃オープンされたのですか?
森:2017年の7月1日にオープンして、1年が過ぎたところですね。
―なぜ、イタリアンと日本酒を組み合わせようと思われたのでしょうか?一見、意外な組み合わせのように思えるのですが。
熊谷:一般的には、そのように思われる方が少なくないかもしれませんね。
しかし、実は日本酒というのは繊細な味わいがあり、温度でその味わいが変わるので様々な楽しみ方ができるのです。その日本酒の魅力を活かすことができれば、和食だけでなく他の料理にも絶対に合わせられると思い、私がこれまで関わってきたイタリアンと日本酒を組み合わせようと考えたのです。
―日本酒とイタリアンを深く知る熊谷さんだからこそできる、斬新な発想ですね!
熊谷:日本人は飲み物をシチュエーションでカテゴライズしてしまうんですよね。和食やお寿司は日本酒、お祝いの時はワイン、乾杯はとりあえずビールというように。
今やワインは寿司、中華、フレンチ、イタリアン、多くの飲食店においてありますが、日本酒がイタリアンや洋食のお店においてあるということはあまりないですよね。
―そうかもしれませんね。
熊谷:私は、幅広く楽しめる食中酒としての日本酒を知っていただくために、『Firenze Sake Tokyo』では “ペアリング” というところを極めていきたいと思っています。
―実際には、日本酒と合わせるためにお店で出されるメニューも何か工夫を施されているのですか?
熊谷:そこは、うちのシェフの力を借りています。彼は旬の素材や日本ならではの食材をイタリアの郷土料理に結びつけるのが得意で、イタリアンなのに柚子や山椒を使ったりもするんですよ。
また、食材に旬の時期があるように、日本酒にも旬というものがあることをご存知でしょうか。夏なら夏酒、秋には冷やおろしなど、その旬の日本酒に合わせたメニューも考えています。
―実際にお店にいらっしゃるお客様は、どのような方が多いですか?
熊谷:30代だと男性もいらっしゃいますが、女性のお客様が圧倒的に多いです。40代になると男女半々ぐらい。日本酒好きの若い女性に多くご来店いただけているのは、驚きましたね。常連のお客様になると、ほとんど日本酒のメニューを見ずに「この料理に合う日本酒をお願いね」と注文してくださるんですよ。
―熊谷様やシェフに信頼を寄せていらっしゃる証ですね。
オープンから1年経ち、店舗の雰囲気はいかがですか?
熊谷:オープンしてから3ヶ月ぐらいは、注文される飲み物のうち日本酒は6割から7割でした。ワインも置いているので、イタリアンだからワインを頼むというお客さんも多かったです。
でも、今では日本酒の注文が9割を占めるようになりました。日本酒とイタリアンという異色の組み合わせを気に入ってくださるお客様がいてくださって、本当に嬉しい限りです。
日本酒を造っている酒造の社長様を招いたイベントを開いたりしながら、この独自の路線を掘り下げていけばまだまだファンは増やせるんじゃないかと思っています。
いつでも、どこでも日本酒に触れられるアプリ
『SakeWiz』
―飲食店運営と同時展開するアプリ『SakeWiz』についても伺います。まず、このアプリはどのようにして作られたのでしょうか。
森:このアプリ『SakeWiz』は、まずは消費者と日本酒との接点をより多く作ることを目指しています。
例えば、日本酒は四六時中飲むことはできませんが、アプリならいつでもユーザーが接触できますよね。昼間はアプリをご利用いただいて、日本酒のことを調べたり日本酒を購入したりすることができ、夜はお好きな日本酒を置いているお店に来ていただく。
―このアプリは、他のアプリにはないユーザーから人気の機能もあると伺いました。
森:「ラベル画像スキャナー」機能ですね。
これは日本酒のラベルを撮影すると、AIが撮影データをスキャニングして、データベースに同じラベルがないかを探し、どんな蔵元さんで造られている、どんなお酒かを教えてくれる機能です。
そうした情報を、現在は日本語、英語、韓国語、中国語の4ヶ国語で提供しています。外国の方は漢字が読めないのでラベル自体を読むことができないので、このスキャニング機能は重宝されているようです。
現在、このアプリは2018年の1月にプレリリース、5月にグランドオープンした後、日本、カナダ、アメリカ、シンガポール、韓国、香港の6ヶ国で提供中。今後の本格的なプロモーションを見据え、今はデータベースの充実を図っています。
―データベースには、現在どれぐらいの日本酒の情報があるのですか?
森:現在は、9,000ぐらいですね。
日本酒のマーケット全体では3万ほどの銘柄があると思うのですが、中には地方で作られて地方で消費されてあまり流通しない日本酒もあります。そのため、推測ですが1万3,000種類くらいの日本酒をカバーすれば、流通している日本酒の80%~90%をカバーできるんじゃないかと思っています。
―流通するほとんどの日本酒をカバーしていますね!
しかしながら、これほどのアプリを開発されるとなれば、やはり苦労されたこともあるのではないですか?
ジェイソン:技術的な苦労はあまりなかったのですが、日本酒の情報を集めるのに苦労しました。
というのも、当初は蔵元さんから情報をいただこうと考えていたのですが、実際にたくさんの蔵元さんとお会いしてみるとそううまくはいきませんでした。
アプリのコンセプトや機能を説明させていただくのですが、アプリに登録することで蔵元や日本酒業界にどんなメリットがあるのか、なかなか理解していただくことができなかったのです。中には、ITに対して苦手なイメージを持っている方も少なくなかった。
そこで、最終的にはほぼ自分たちの力で情報を集めて、豊富な情報量を実現しました。
―これほどの情報をご自身たちで…。相当な時間と労力をかけられたのですね。
しかし、こうしてお話を伺っていると、日本酒好きのお客様がアプリ『SakeWiz』を手に飲食店を訪れる姿が目に浮かびますね。
森:日本酒を飲む機会が月に1、2回だった人が月に2、3回飲むようになれば、日本酒の消費量は2倍になります。そのようにして日本酒の消費量が増えれば、蔵元の減少にも歯止めがかかる。
今後は、お店情報やイベント情報、自分の好きな日本酒から似た味わいの日本酒が探せる機能などを充実させていきたいと思っています。このアプリが、“日本酒を広める伝道師”としての役割を担えるようになっていったらいいですよね。
日本酒情報を流通させ、
日本酒業界を盛り上げたい
―SakeWiz株式会社としての今後の展望をお伺いしてもよろしいでしょうか。
森:一言で言うと、世界一信頼性のある日本酒情報があるサービス・店舗であると認識していただけるところを目指していきます。
そのために、まずは日本をはじめ世界各国でアプリ『SakeWiz』のユーザーを増やしていきたいですね。日本酒のラベル画像の認識技術は世界一だろうと思っているので、この技術を磨いて何か違った視点で活かせたらとも考えています。
―店舗運営に関してはいかがですか?
熊谷:今後は、フィレンツェSakeブランドとして店舗展開をしていきたいですね。すべての店舗が同じ形式というよりは、立ち呑みスタイルの店舗があってもいいと思っています。
ただ、どの店舗でも日本酒とイタリアンを掛け合わせて、「日本酒って、こんな料理に合うの!?」という驚きと喜びを提供していくことは変わりません。
―そこへの追求は全くブレることがありませんね。
熊谷:はい。こうした店舗展開を行うことで、繰り返しになりますが日本酒の魅力をもっと多くの人に知ってほしいなと思っています。
先ほどから日本酒とワインを比較した話をさせていただくことがありましたが、日本酒とワインには大きな差があります。それは、日本酒は庶民的で身近なお酒で、ワインにはステータス感があるということ。
たとえば、ワインはなにかのお祝いで飲んだり、週末のホームパーティーで飲んだりしますが、日本酒は同じポジションではありませんよね。私は、ワインと同じステータスにまで日本酒の存在感を上げていきたいと思っています。
ぜひうちのお店でイタリアンと日本酒を合わせる楽しみ方を知っていただけるとうれしいですね。
森:そうですね。そして、一番大きな目標でいうと、日本酒の情報を流通させて日本酒業界を盛り上げること。さらに、その流れを日本だけではなくてグローバルに広げていくことを目指していく。
それが、僕たちのやるべきことです。